tanzaku
ステンレスの羽根がブンブンと音を立てた。

その度に感動する。

その扇風機は強力なパワーで部屋の熱気を排出する。


今年の暑さは記録的なものだという。

37度だの38度だの。

まさに

「殺す気かっ!」

のレベルで、

アトリエの気温は日中45度を超えていた。


ここ数年エアコンをつける前に扇風機を換気扇がわりにして熱気を逃しておくのが習慣になっていたのだが、今年はついに業務用扇風機を導入することにした。


うちに届いた業務用扇風機はまさに仕事人のようにシンプル。

普通のプラスチック製ではなく、金属のボディを持つ。

羽根がステンレスだ。

しかもでかい。

弱のモードで普通の強風ぐらいのパワーがでる。

運転中に指を入れようものならと、考えただけで恐ろしい金属製のモンスター。


それを身体で受けるのではなく、外に向けている。


するとどうだろう。

みるみるうちに熱気が部屋から逃げていく。


さらに、アパートの裏は森なので、逃がした熱気くらいの量の森の空気が部屋に入ってくる。

その空気は気持ちがいい。

空気が入れ替わると結構過ごせるもので

今年はまだエアコンをつけていない。


熱気を冷気でねじ伏せるのではなく、暑さをかわしていく発想。

北風と太陽の絵本に出てくる、太陽のように。

または蝶のように舞い、蜂のように刺す、モハメド・アリのように華麗に。


ふと外を見ると、そこに舞うのは蝶ではなく巨大な蛾で、それをトカゲがバクバク食べていた。

森ってすごい。


世間がざわざわした日だった。


手作りの散弾銃から出た弾が元首相の身体を貫いた。

多くの人がショックを受けたその出来事。


一瞬のことで人が死ぬ。

生前彼に「死ね」という言葉を投げていた人も言葉を無くした。


それは本当に彼の死を望んだ言葉ではなかったからか。

犯人の言葉からは宗教団体の名前が出た。

何が起きているのか。

政治目的ではないのか。

じゃ、何で彼が狙われたのか。

なぜ現首相でないのか。

なぜ選挙期間中なのか。

あ、演説中を狙ったからか。

SPは何してた?


で彼は死んだ。

大量のマスクを残して。

いや、政治家としての賛否はあるのだろうが、庶民感のなさ故か

悪役がやけにハマっていた感が強い。 


事件の詳細はまだわかっていないことも多いがいずれ明らかになってくるのだろう。


「散弾銃」

「元首相の死」

「宗教団体」


これだけ並べば話題はこれ一色。

おまけにコロナだし暑いしロシアとウクライナもまだやってるし。


詰め込み過ぎのパニック映画のような状態でまともに考えると気が狂いそうになる。

そんな精神状態でもネトフリで「ジョーズ」を見ると、面白いから人間は気楽なものだ。

でも人生はパニック映画ほどよくまとまっていない。現実はもっとカオスなのだ。


とはいえ、パニックになって、街を練り歩き、ほっかむりに裸踊りなどしているわけにはいかないので、ぼちぼち気を取り直しつつ、ハッシュタグ国葬反対もいいが、自分達はまずはアパート横に生えてる笹にコピー用紙で作った短冊を飾った。書いた言葉は「ステイローカル」。


これからも言い続ける。変な宗教なんかよりお金もかからないし。