アーティスト村上佳奈子「ステイローカル」のスタッフブログ

ウォーホル日記(Andy Warhol Diaries)という本があります。ウォーホルのタイピストとして働いていたパットハケットという人が書いた分厚い書籍ですが、これをヒントにステイローカル日記(Stay Local Diaries)というのを作りました。このブログの記事はスタッフによるものです。

村上佳奈子ウェブサイト
http://www.kanakomurakami.com/
ステイローカルオンラインショップ
https://staylocal.thebase.in/
Instagram
https://www.instagram.com/muccaccum/

カテゴリ: アトリエ

今日はすばらしく晴れたので、布団を干して、数千匹のダニを殺害し、引きあげた布団に軽く掃除機をかけ、粉状になったダニの塊を見ただけで数回くしゃみをしてから村上と二人でアトリエに向かった。

実は村上は個展を来年に控えており、したがって家での夫婦の話は展示に関わる話が多くなる。

あるときはホワイトボードを前に会議をし、議論は紛糾し、物が飛び交うまではいかないまでも、ぎゃあぎゃあ話し合いがつづくので、さぞ近所迷惑だろうと思うが、今の所苦情があるわけではないので、遠慮なく会議が行われている。 

家族会議にホワイトボード。

これ意外とおすすめですぞ。

人はホワイトボードを前に会議すると、なぜか「ですます調」になる ことを発見しました。

さて、今日の作業はその展示にまつわる、写真の撮影であった。黙々と撮影環境を整え、埃っぽいアトリエを縦横無尽に動き回り、数回くしゃみなどをしながらも無事に撮影を完了したのであった。

そんな具合で個展ともなると、我が家の場合、一大事業なのであり、一切の妥協は許されず、成功にむけて一丸となるのである。

そのためこれからますます、議論は紛糾し、ことによっては物が飛び交うこともあるだろうが、アパートの隣人は数カ月前に引っ越しており、多分、すぐに苦情がくることはないだろうと安心している。
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家を一歩出ると、森になっている。 

出来る限りアトリエの近く

限りなく格安

少なくとも悪くない雰囲気 

それらを追い求めたらたどりついた住まいだ。 

外では鳥がピーピー

カラスがカァ

部屋にしょっちゅう虫が侵入し 

村上がギャーと叫び、

その声で私の心臓は止まりかける

そんな日常。 

それというのも芸術家たるものは、人里離れた山小屋にアトリエを構え、 人知れず宝物のような作品を残し、そして死後急激に認められる。 

まわりの人は言う。

「あの人は何を考えてるかわからなかったけど、実は天才だったのだねぇ」

真の芸術家とはそうあるべき! 

なんて理想があるわけはなく、単純に合理的判断、

経済的事情から引っ越しをしたのが今年の4月だった。 

この住まいは、外気の影響も大きく、夏は殺人的に室温が高く、冬も同様に寒くなるだろう。

そんな住まい。 

でもここまできた以上、

アトリエのご近所さんになった以上、 

我々はやるしかない。 

芸術するぞ。 

この半年に出会った生き物は・・・

タヌキ、ハクビシン、猫、ガマガエル(特大)、ナメクジ(長い)、カブトムシ、クワガタ、トカゲ、蝉、蜘蛛、カメムシ、カナブン、カミキリムシ、キリギリス、謎の甲虫類多数、etc 

ここ、東京なんだけど。

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経済活動は一番リターンの期待できる分野に一番多くの投資を行うべきである。
というのが世の中の常識だとすると、 我が家の経済感覚は、少々まともではないということになるのだろう。

村上は、出会った時、すでにこのアトリエを所有していた。
初めてここを見たとき、私は感動した。
無名にすぎない彫刻家がこんなアトリエを持っていることに。

そして作り続けることへの覚悟に。

それが思い込んだら、突っ走る(厄介な?)気質につながっていることに気付くのに時間はかからなかったが。

村上はとにかく思い込むと凄い。

「明日は水戸芸術館にいくからね!」
「横浜トリエンナーレだよ!!」
「私達はベネチアビエンナーレにいくべき!!!」

なぜ「べき」と言い切れるのかわからないが、これは村上のよく使う言い回しである。
こうして数ヶ月先の予定が自動的に決まっていく。
そのほとんどは、芸術のことである。

おかげで今まで絵のことしか知らなかった私は、彫刻やインスタレーションにやたら詳しくなったどころか、自分の展示でインスタレーションを行うまでになってしまった。

話はそれたが、このアトリエで村上は日々、芸術作品を作っており、私も絵を描いたりしているのある。

芸術を職業とするなら、収支は毎年赤字である。

毎月の家賃に加え、アトリエ代が出て行っている。

それでもなお、ここで芸術をやるのは、

覚悟であり、執念なのだ。

時々、ここでお金に変えられない喜びが得られる(本当は変えたい)。

ここで書かれる生活は、どこにでもいる美大出身夫婦の暮らしであり、

お金に縛られず、幸せに生活する方法になるかもしれない(いや、ならないか)。

そんな感じで始めてみる。

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